子どもの手記

ユリコが、高校をやめる時に両親に宛てた手紙

ユリコ

私はどうしていいかわかりません。学校は、はっきり言って面白くないし、だるいだけ。行きたくない日でも、それは朝思うだけなのか、行ってみるとけっこう楽しい日もあります。

お父さんの気持ちは痛いほど良くわかります。やっぱり、お父さんもお母さんも、私に対して、卒業して、それなりに就職して、ちゃんと自立してほしいと考えているんだと思う。それは、世間体とか、周りの眼とか気にして言っているんじゃなくて、それが私のためで、私が後悔しないように言ってくれているんだと思う。一番に私のことを考えてくれてるんだとわかるから、やっぱり、学校を辞めるっていうのは、親に対して一番の裏切りだと思います。

私がA高校に合格して、一番喜んでくれたのはお父さんでした。私自身よりもお父さんの方が喜んでくれたのでは…?いつか、お父さんと進路についてまじめに話した時、

「心配せんでも、ちゃんと高校は卒業するけん。」

って言ったのに、こんなに心配かけてごめんなさい。はっきりした事はわかんないけど、もうこれ以上学校を続ける気はあまりないです。周りが真剣に私を学校に行かせようとすればするほど、なんか無理やり行かされてる感じがして、納得できなくて行きたくなくなるのです。もう、どうでもよくなったりします。

今の私には、どれだけ「高卒」が必要とか、何でそこまでお父さんとお母さんが悲しむのか少しわからない面もあります。高卒とか本当にただの肩書きだと思うし、高校を辞めたら、そんなに人生が変わるのかなあと思ったり、学校を辞めても私は私のままと思うし…。それより何より、今の状態は私にとって本当にきついし、良くはないと思います。周りを裏切らないために無理して学校に行って、それが続くと、今度は疲れて休みたくなる。休むとみんなが騒いで、泣きたいのも我慢して学校に行かないといけない。なんか本当の自分が見えなくなりそうで「怖い」と思う時もあります。今、学校を辞めるっていうのは、ただの逃げかもしれない。

今、私が考えている事は、学校を辞めて通信制の高校に行きたいと考えています。今から通信制の高校に行くと、一年でいいし、高卒も取れます。一ヶ月に二回学校に行けばいいから、平日はバイトでもしようかと思います。今、「自分一人で生きていけ」って、家を出されても、お金もないし、生きていけません。家にいる時は、ご飯とかも作るし、お小遣いは自分でバイトして稼ぐつもりです。

昨日、弟に「人間のクズ」と言われました。かなりむかついた。悲しかった。私は私なりに真剣に生きてるし、バカみたいに見られるかもしれないけど、やっぱり、お父さんとかお母さんに理解できない面あると思うけど、お父さんにもお母さんにも弟たちにも「人間のクズ」とか「育て方をまちがった」とか言って、今の私を否定してほしくない。本当に傷つくから…。私だって、毎日、何か良い方法はないか悩んでいます。

お父さんは、「高卒は、お父さんたちが私にしてやれる事で、私がこれから一生持って行く財産だ」って言ったけど、お父さんが働いてくれるおかげで、ホームステイにも行けたし、お父さんとお母さんからもらった良い所だっていっぱいあると思うし、それも、私が一生持っていく財産になってると思っています。

なんか、二人がそうやって悲しんだりする姿を見ると、私がかなり悪い事をした気持ちになります。そんなに悲しまないでください。やれるとこまでがんばったけど、もう無理と思うから、いっしょに他の良い方法を考えてください。ごめんね。

ユリコの手紙から見えてくる子どもを理解するポイント

  1. 「人間のクズ」「育て方を間違った」「人生を失敗した」…という否定は絶対にしてほしくない。高校を続ける私も、高校を辞める私も、同じ私なのだから…。
  2. 高校を辞めることを悲しまないでほしい。私が決めることができたことを認めてほしい。
  3. 「高校を続けるか」「高校を辞めて働くか」の二つの道以外に無いというのではなく、これからの方法を一緒に考えてほしい。